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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)2974号 判決 1950年3月23日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人向江璋悦、同橋本公亘上告趣意第一点について。

原判決が判示犯罪事実を認定する証拠資料として、第一審第一回公判調書中被告人両名の供述として判示同趣旨の記載並びに井田英一その他の者の提出に係る犯罪届書等の記載を掲げたこと及び旧刑訴三六〇條第一項が所論のごとく規定して判決書には証拠上の根拠を明示して裁判官の恣意による有罪判決のないことを期していることは所論のとおりである。そして右公判調書によれば、被告人並びに原審共同被告人立石茂則の両名は、第一審公判廷において、本件起訴状に引用されている司法警察官意見書記載の犯罪事実を読み聞かせられていずれもその通り相違なき旨供述していることが明らかであり、また、原第二審公判調書によれば、両名は右意見書を讀み聞かせられて弁解を爲し、更に、証拠調手続においても第一審公判調書と共に右意見書の内容を読み聞かせられ且つ右意見書記載の犯罪事実は原判決の判示犯罪事実と同一であることが認められる。されば、第一審第一回公判調書中の被告人等の供述記載は、原判示犯罪事実を自認したものであって、互に相待って判示犯罪事実を証明するに足るものというべく、証拠の種目としては被告人の供述記載であって、司法警察官意見書の記載ではないといわなければならない。從って、原判決認定の証拠上の根拠は、結局第一審公判廷における被告人外一名の判示同趣旨の供述記載であることを知ることができるから、原判決は、旧刑訴三六〇條一項の期待する証拠上の根拠を具体的に明示しているものというべく、所論引用の判例は本件には適切でない。論旨は、それ故に結局採ることができない。

同第二点について。

原判決の引用した証拠は、論旨第一点で述べたごとく、被告人等の第一審公判廷における供述記載であって、司法警察官の意見書の記載ではなく、しかも被告人等は第一、二審とも共同被告人として公判期日において互に相手方の供述に対し相手方を訊問する機会を充分に与えられたものであるから、共同被告人の第一審公判廷における供述記載について、第二審において重ねてその供述者を訊問する機会を与える必要はなく、まして証拠とされていない前記意見書の作成者を訊問する機会を与えねばならぬ法的理由は毫も存しない。されば、本論旨も採ることができない。

よって旧刑訴四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

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